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HOUSE of HOSOO Blossom

会期
2024年4月6日(土)-2024年5月26日(日)
開館時間
10:30–18:00
(祝日・年末年始を除く、入場は閉館の15分前まで)
入場料
無料
会場
HOSOO GALLERY

この度、株式会社細尾では、「HOUSE of HOSOO Blossom」と題し、HOUSE of HOSOOが手がけた新作アートピースを公開します。HOUSE of HOSOOとは、京都・西陣地区に位置する細尾の織物制作の拠点であり、職人が1200年に及ぶ西陣織の歴史を継承しつつ、先端的な染織表現の研究を行う創意の場です。「HOUSE of HOSOO Blossom」は、このHOUSE of HOSOOが、染織を探究するなかで生み出した織物の表現技法と、希少な植物を用いた染色によって制作された、一点もののアートピースを公開する展示シリーズです。

Blossomとは、花や開花を意味する言葉です。染色には、植物の花の色をうつしとるような不思議な力があります。樹木の幹や枝、皮で糸を染めると、樹々が開花した時の花盛りの色彩が糸に現れることがあります。これらの花の色は、花びらそのものからは得られず、特に桜染めは、開花前の樹木の皮や枝からしか得られない色彩とされています。また、その色は、染めを行う人の感性によっても異なる色彩となって現れます。花の色とは、まさに複雑な条件と機運が重なり合うことによって得られる特異な色彩なのです。

本展にて公開される作品の色彩は、樹齢およそ180年のしだれ桜との出会いによってもたらされました。福島県二本松市に生息する天然記念物のしだれ桜の老樹を剪定する折に、大変貴重な大振りの枝をお分けいただきました。このしだれ桜は、平安時代の古戦場跡に生息する2本の樹から成るもので、日本三大桜の一つである名桜「三春滝桜」の孫桜であると言われています。細尾では、2020年に古代染色研究所を設立し、日本において千年以上前に行われていた植物染めの再現研究を行ってきました。その知見を生かし、このしだれ桜の枝を用いて糸染めを行ったところ、180年にわたり生き続けてきた老樹から、鮮やかな艶色が現れました。

桜の花は、日本人にとって春の到来を感じさせる植物であり、俄に人を活気づけるものです。一方で、花が散りゆく儚さから、四季の移り変わりだけでなく、生と死、夢と現実の間を想起させる植物でもあります。HOUSE of HOSOOでは、織物として、桜の多元的な側面を表現するべく、2つのコンセプトに基づいた作品を制作しました。

どの季節に咲く花も、自然の中に流れる時間は、一方向に進むのではなく、循環するものであることを教えてくれます。花の色彩を写しとった織物は、花の過去の姿であると同時に、循環における予兆でもあります。「HOUSE of HOSOO Blossom」では、花の色彩を取り入れた作品制作を通して、人と自然の関わりについて哲学的な問いを深めていくとともに、その文化史的意味も含めた考察を行いたいと思います。

Exhibition Handout

主催:株式会社細尾
リサーチ:原瑠璃彦
展示協力:井高久美子
ディレクション:細尾真孝

写真:田中恒太郎
宣伝美術:森田明宏