ABOUT

HOSOO GALLERYは、西陣の老舗「細尾」が運営するアートギャラリーとして、2019年9月に設立されました。

布は古来、人の生活の身近にありながら、人間の美意識を表現するために様々な技術的、技巧的進化を遂げてきた最古のメディウムです。多様な時代、文化、そして未来の社会を創造していく手立てとして、染織に焦点を当て、「美とは何か」「人間とは何か」といった根源的な問いに迫りたいと考えています。

HOSOO GALLERYでは、幅広い専門家との協働を通して、アートやデザイン、工芸、サイエンスなど、多角的な視点から染織を扱う企画展示を中心に開催しています。

  • 展覧会 2〜3回(不定期)
  • トークイベント
  • アーティスト・イン・レジデンス事業
  • 共同研究開発事業

DIRECTOR’S STATEMENT

細尾真孝

メディアとしての布

細尾は、1688年から西陣の織屋として家業を営んできましたが、もう一つの顔として、百年前、曽祖父の代から始めた問屋業があります。問屋業としては、北海道から沖縄まで最高峰の染織作家の染織を扱い、日本中に紹介していくということを行ってきました。私自身、海外へ西陣織を紹介する業務を中心にしてきましたが、日本の他の染織産地のことを何も知らないことに気がつき、とにかく一度行ってみようと思い、全国の様々な産地を訪れるようになりました。実際に訪れるとそれぞれの織物が、異なる歴史、風土、そして人と密接に関わっているメディアなのだということに気づかされました。

染織は、時の権力や社会構造とも密接に繋がっています。たとえば西陣織や上布と呼ばれる布は、支配階級からの庇護を受けたり、献上することを前提とした歴史の中で、より洗練され、美を追究していく過程がありました。ところが一方で、こぎん刺などは、最初は自分たちが寒さをしのぐために麻布に糸を刺していったのが、誰からの圧力も受けないのに、手間をかけ、美を追求していった。そこには人間の美を求める本質的があります。僕にとって、染織産地を周ることは「人とは何か?」という発見につながるような気がしています。

元々は美を作るために人はテクノロジーを進化させてきたのではないか

テクノロジーとは人間の身体の機能を延長させたもので、機械の機、織機の機からきているように、織物を作るための、美しいもの作るための道具がテクノロジーの原点だと思います。

今の時代はテクノロジーが先にあり、美とテクノロジーは全く違うところにありますが、人は美を作るためにテクノロジーを進化させてきたのではないかと考えています。

世の中が、布を通して「人間とは何か」「布とは何か」というような本質的な問いの答えを探ろうとしている機運が高まっているように思うんです。なぜ人はこんなに大変な思いをして時間をかけて布を織ってきたんだろうかという本質的な問いを取り戻すタイミングにきていると思います。

これから人が宇宙旅行に行ったり、AIが出てきたり、人間の在り方そのものが問われる時代になっているからこそ、人間の本質を取り戻すための一つの媒介として、布を題材として扱っていきたいと考えています。